【目次】
第1章:初めに – 膝痛と肥満の誤解
「最近、階段を降りるときに膝がズキッとする」「立ち上がるときに違和感がある」
そんな悩みを感じている方は、実は少なくありません。
そして多くの方がこう思うのです。
「膝が痛いのは、太ったからだろう」
確かに、肥満と膝の痛みには深い関係があります。
しかしその一方で、体重だけが原因ではない場合も多いのです。
「体重を減らせば膝は治る」は本当か?
整形外科やテレビなどでよく聞く「痩せれば膝痛は治る」という言葉。これは半分正解で、半分誤解でもあります。
確かに体重が増えることで、膝への物理的な負担は確実に大きくなります。体重が1kg増えると、歩行時の膝への負担は約3倍、3kg分の衝撃になるといわれています。
つまり、体重が5kg増えると、膝には約15kgもの追加負荷がかかる計算です。ただし問題はそれだけではありません。
最近の研究では、肥満が引き起こす「炎症反応」も膝痛の一因であることがわかってきました。
つまり――
「体重のせい」だけでなく、「脂肪が分泌する炎症物質」によって関節が痛むケースもあるのです。
「年齢のせい」でもなく、「体重のせい」だけでもない
多くの人が、「膝が痛いのは年だから仕方ない」と諦めがちです。
しかし実際には、生活習慣や体組成、筋力のバランスが複雑に絡み合って、膝の痛みを引き起こしています。
たとえば――
• 太ももの筋肉(大腿四頭筋/ハムストリングス)が弱い
• お尻の筋肉(大殿筋/中殿筋)が弱い
• 太ももの筋肉(外側広筋/大腿筋膜張筋)が硬い
• 股関節や足首の動きが悪い
• 長時間の立ち仕事や座りっぱなしの習慣
• 栄養バランスの乱れによる軟骨の劣化
こうした要素も、肥満と同じくらい膝に影響を与えます。
「体重を落とすこと」よりも先に、「体の使い方」と「筋肉のバランス」を整えることが、根本的な解決への第一歩なのです。

第2章:肥満が膝に与える具体的なメカニズム
~体重だけでは語れない「関節への負担」の真実~
1.体重の増加が膝にかける物理的負担
まず最もシンプルな関係が、「体重増加=膝への負担増加」という構図です。
私たちが歩く、階段を上る、しゃがむといった動作をするたびに、膝関節には体重の2〜4倍の力がかかるといわれています。
• 平地を歩く → 体重の約3倍
• 階段を上る → 約4倍
• しゃがむ・立ち上がる → 約6倍
つまり、体重が1kg増えると、膝は日常生活の中で3〜6kg分の負担増を強いられている計算になります。
この「小さな負担の積み重ね」が、時間をかけて膝の軟骨をすり減らし、やがて変形性膝関節症(OA)へとつながるのです。
2.脂肪が生み出す「炎症物質」が膝を攻撃する
肥満の怖さは、重さだけではありません。
実は「脂肪そのもの」が、炎症を引き起こす臓器であることが明らかになっています。脂肪細胞が増えすぎると、体内では次のような現象が起こります。
• 脂肪細胞が膨張し、周囲の血管や細胞を圧迫
• その結果、慢性的な炎症反応が発生
• 炎症性サイトカイン(IL-6やTNF-αなど)が分泌される
これらの炎症物質は、血流に乗って膝関節内にも届き、軟骨細胞を傷つけるのです。つまり、「太っていることで炎症が進み、膝が痛む」――そんな悪循環が起きているのです。
脂肪はただのエネルギーの塊ではなく、「炎症を起こす臓器」でもある。これが、現代医学の新しい視点です。
3.筋肉バランスの崩れが“膝にねじれ”を生む
肥満の方の多くに見られるのが、筋力と動作のアンバランスです。
特に、以下のようなパターンが多く見られます。
• 太ももの前(大腿四頭筋)は弱く、外側が硬い
• 大腿四頭筋とハムストリングスの筋力のバランスが悪い
• お尻(中殿筋)がうまく使えず、膝が内側に入る
• 足首が硬く、動作の衝撃をうまく吸収できない
この結果、膝がねじれた状態で荷重を受けるようになります。すると膝の内側に過剰なストレスが集中し、痛みを感じやすくなるのです。
4.代謝と血流の低下も、関節の回復を妨げる
肥満は筋肉量の低下と血流の滞りを招きます。その結果、膝関節に栄養を送る力が弱まり、修復力が低下します。
軟骨には直接血管が通っていないため、関節液の循環(=筋肉のポンプ作用)が頼りです。ところが、運動不足で筋肉が使われないと、その循環も滞りがちになり、関節の再生が追いつかなくなります。
「肥満=体重の問題」と思われがちですが、実際には「炎症・筋力・血流・代謝」――あらゆる要素が複雑に絡み合って、膝痛を悪化させているのです。
次章では、いよいよ実践編。「膝を守りながら無理なく体重を落とすためのトレーニング戦略」
を紹介します。
第3章:膝を守りながら無理なく体重を落とすためのトレーニング戦略
~“減量”と“膝の回復”を同時に叶えるアプローチ~
1.膝を守る基本原則:「減らす」より「支える」
膝を痛めやすい方に最も多い誤解が、「まずは体重を落とせば膝が楽になるだろう」という考え方です。
確かに体重を減らせば膝への負担は軽くなりますが、筋肉が弱ったまま体重だけ減らすと、かえって膝を痛めることがあります。
理由は単純で、筋肉が「関節を支えるクッション」として機能しなくなるからです。
まずは「体重を減らす」前に、
◆ 筋肉を使える状態に戻す(再教育)
これがスタートラインです。
2.初心者でもできる膝にやさしい筋トレ3選
膝に痛みを抱える方が最初に取り組むべきは、「膝に負担をかけずに筋肉を目覚めさせる運動」です。ここでは、自宅でも簡単にできる3つの基本種目を紹介します。

① チェアスクワット(椅子スクワット)
目的:太もも前(大腿四頭筋)とお尻の筋肉を同時に活性化
• 椅子に軽く腰をかける位置に立つ
• 背筋を伸ばしたまま、ゆっくりと腰を下ろす
• 座る寸前で止め、再び立ち上がる
◆ 10回 × 2〜3セット
ポイント:
・膝がつま先より前に出ないように意識
・踵、母趾級、小趾級の3点で均等に地面を押す
・股関節主導の動きを意識する
② ヒップリフト(お尻上げ)
目的:お尻(殿筋群)と太もも裏(ハムストリングス)の強化
• 仰向けに寝て膝を90度に曲げる
• かかとで床を押すようにしてお尻を持ち上げる
• 肩から膝まで一直線になったら2秒キープ
◆ 10〜15回 × 2セット
ポイント:
・お尻の力で持ち上げ、腰を反らさない。
・踵で地面を押した結果、臀部が地面から浮くことを意識
③ ストレート・レッグ・レイズ(膝を伸ばしたまま上げる)
目的:膝を安定させる大腿直筋の強化
• 仰向けで片膝を曲げ、もう片方はまっすぐ伸ばす
• 伸ばした足をゆっくり30〜40cm上げる
• 足を上げる前にお腹(下腹部)に力が自然に入るようにする
• 足を下ろす際に腰が剃らないようにする
◆ 各脚10回 × 2セット
ポイント:
・足を上げる際に下腹部に力を入れる
・足を下ろす際に腰が反らないようにする
・股関節から足を上げることを意識(ヘソのしたぐらい)
◇「痛みが出ない範囲」で行うことが最重要。
「少しキツい」程度の負荷を目安にしましょう。
3.有酸素運動は“歩く”より“水中”から始める
膝痛を抱える方の有酸素運動として最もおすすめなのは、水中ウォーキングやエアロバイクです。
• 水の浮力で関節への負担が軽い
• 脚全体を使うので代謝アップ
• 持久力を高め、脂肪燃焼にも効果的
特に水中では膝にかかる衝撃が陸上の約1/10程度に抑えられるため、痛みを抱えた方でも安全に続けられます。
4.栄養面のサポートも忘れずに
トレーニングだけでなく、関節を守るための栄養補給も大切です。膝痛改善のために意識したい栄養素は次の3つです。
• タンパク質:筋肉・靭帯の修復材料
→ 鶏むね肉、魚、卵、大豆食品
• ビタミンC:コラーゲン生成をサポート
→ ブロッコリー、キウイ、パプリカ
• オメガ3脂肪酸:炎症を抑える
→ サバ、イワシ、アマニ油
特にオメガ3脂肪酸は、先述した炎症性サイトカインの働きを抑える作用があるため、肥満による関節炎の悪化を防ぐ効果が期待できます。
5.「痛みを我慢して動く」は絶対NG
膝の痛みは、体からのサインです。
「少し痛いけど我慢してやろう」は逆効果。
痛みを感じたら、
• 動作を中断し、アイシング(冷却)する
• 翌日は安静+軽いストレッチに切り替える
• 症状が長引く場合は、整形外科や柔道整復師に相談する
「休む」もトレーニングの一部。
回復力を味方につけることが、長期的な成功につながります。
次章では、まとめとして
膝痛改善と減量成功を両立させるための考え方と行動指針
をお伝えします。
第4章:膝痛改善と減量成功を両立させるための考え方と行動指針
~“焦らず、正しく、続ける”が最大の近道~
1.「膝が痛い=動かさない」ではなく「正しく動かす」
膝が痛むと、どうしても「休めば治る」と思いがちです。しかし、膝関節は動かすことで血流と栄養が届く部位です。
まったく動かさない期間が続くと、
• 筋肉が弱る
• 関節液の循環が滞る
• 可動域が狭くなる
といった“二次的な悪化”を招いてしまいます。
ですから大切なのは、「痛みを避けながら、正しいフォームで少しずつ動かす」という発想です。
膝を休ませる日があっても、「完全に止まる日」は作らないようにしましょう。
2.成功の鍵は「日常動作の見直し」にある
どんなに良いトレーニングをしても、日常の姿勢や動作が間違っていれば、膝の負担は減りません。
以下のポイントを意識してみましょう。

■ 座り方
• 膝が90度になるように椅子の高さを調整
• 背もたれに頼りすぎず、骨盤を立てて座る
■ 立ち方・歩き方
• 体重をかかとと親指の付け根で均等に支える
• 膝が内側に入らないように意識する
• 1歩1歩を“お尻で押し出す”ように歩く
■ 家でできる習慣改善
• エレベーターより階段を(痛みのない範囲で)
• 長時間座るときは1時間に一度、軽くストレッチ
• テレビを見ながらヒップリフトを数回
「筋トレの時間を作る」よりも、まずは生活そのものを運動に変える意識が大切です。
3.体重より「体組成」を見ること
膝の痛み改善において、単なる体重の数字はあまり意味がありません。
大切なのは、
• 脂肪が減っているか
• 筋肉が保てているか(または増えているか)
です。
体重計だけでなく、体組成計を使うことで、「見た目の変化」や「関節の安定感」と連動した本質的な改善が確認できます。
4.継続のコツは「できたこと」に目を向ける
人は「できなかったこと」ばかりに注目しがちですが、膝痛改善もダイエットも、小さな成功の積み重ねでしか成り立ちません。
- 昨日より1回多くスクワットできた
- 今日は痛みなく歩けた
- 夜食を我慢できた
そうした小さな積み上げが、やがて“強くてしなやかな膝”を作ります。
5.一人で悩まない。専門家を頼るのも立派な選択
膝痛と肥満の関係は単純ではなく、体重・姿勢・筋力・炎症・食事・生活習慣――複数の要因が絡み合っています。
そのため、自己流で対処してもなかなか結果が出にくいのが現実です。痛みが長引く場合は、整形外科医や柔道整復師、トレーナーなどの専門家のサポートを受けるのが最短ルートです。
「正しい知識」と「正しいフォーム」が揃えば、膝の痛みは“老化”ではなく“改善可能な症状”になります。
肥満の膝の痛みに関するまとめ
• 肥満は膝に物理的な負担と炎症による影響を与える
• 減量だけでなく、筋力・血流・代謝を整えることが大切
• 「痛みを我慢」せず、「正しく動かす」ことが改善への第一歩
• 膝に優しい運動+バランスの取れた食事で根本改善が可能
• 継続と専門家のサポートが“再発しない膝”をつくる鍵
■ みなさんへメッセージ
「もう年だから仕方ない」と諦める必要はありません。
今の痛みは、あなたの体が“変わるチャンス”を教えてくれているサインです。
膝を守りながら動ける体を、一緒に取り戻しましょう。
第5章:FAQ(よくある質問)
Q1. 「膝が痛いのに運動して大丈夫ですか?」
A1. 痛みの種類によります。
「ズキッ」と刺すような痛みや、腫れ・熱感がある場合は安静が必要です。しかし、「重だるい」「こわばる」程度であれば、軽い運動がむしろ改善につながるケースが多いです。
目安として、
• 痛みが10段階中3以下なら動いてOK
• 翌日に痛みが残るようなら負荷を下げる
と覚えておくと安全です。
Q2. 「体重をどれくらい減らせば膝の痛みが軽くなりますか?」
A2. 一般的には、体重の5%減で膝への負担が大きく軽減するといわれています。
(例:70kg → 約3.5kg減)
たとえ数キロの減量でも、膝には3倍の軽減効果があると考えると、「少しの努力でも確実に意味がある」と感じていただけると思います。
Q3. 「ウォーキングを始めたいけど、膝が痛くなります…」
A3. 無理に歩くよりも、水中ウォーキングやエアロバイクから始めるのが賢明です。膝への衝撃を抑えつつ、全身運動ができるため、「痛みを悪化させずに脂肪を燃やす」理想的な方法です。
ウォーキングを再開する際は、
• クッション性のあるシューズを選ぶ
• 硬いアスファルトより公園などの柔らかい地面を選ぶ
• 歩幅を小さく、テンポよく歩く
ことを意識しましょう。
Q4. 「サプリメントで膝の軟骨は再生しますか?」
A4. 現在の研究では、軟骨を完全に再生させるサプリは存在しません。
しかし、
• グルコサミン
• コンドロイチン
• コラーゲンペプチド
などの成分が「軟骨の劣化を遅らせる」補助的な効果を持つ可能性はあります。
ただし、これらは“魔法の薬”ではなく、食事・運動・生活習慣の土台があってこそ活きてきます。サプリメントは「+α」として考えましょう。
Q5. 「膝の痛みがある人でも筋トレしていいですか?」
A5. もちろんOKです。むしろ、正しい筋トレこそが膝を救います。
ただし、膝に直接負担がかかる動き(深いスクワットやジャンプ系)は避けましょう。
おすすめは次の3種目です。少しでも違和感がある場合は、パーソナルトレーナーに指導を受けてからご自身でチャレンジすることをお勧めします。
• 椅子スクワット
• ヒップリフト
• レッグレイズ
フォームが不安な場合は、専門家のもとでフォームチェックを受けることを強くおすすめします。
Q6. 「痛みが強いときに温める?冷やす?」
A6. 急性の痛み(腫れ・熱感あり)は冷やす(アイシング)。慢性的なこわばり・重だるさは温める(血流改善)が効果的です。
目安として、
• 急に痛くなった → 冷やす
• 長く続いている痛み → 温める
と覚えておくと良いでしょう。
Q7. 「膝痛がある人でも痩せられますか?」
A7. はい、正しい方法を選べば必ず痩せられます。
ポイントは次の3つです。
- 関節に優しい運動(水中ウォーキング・エアロバイク)
- タンパク質を意識した食事
- 痛みが出ない範囲での筋トレ
特に筋トレを続けることで基礎代謝が上がり、リバウンドしにくい体になります。「膝を守りながら健康的に痩せる」――それは十分に可能です。
■最後に:あなたの膝は、まだ“再スタート”できる
膝の痛みは、あなたが思っている以上に改善できる症状です。体重を落とすことも、筋肉をつけることも、どちらも「自分を守る行為」です。
もし今、階段や立ち上がりで膝の不安を感じているなら――
それは“体からのSOS”であり、“変わるチャンス”でもあります。今日から始めましょう。
「膝をかばう生活」から「膝を育てる生活」へ。
江東区大島・住吉のパーソナルトレーニングジム サモーナでは、医学的根拠に基づいた膝痛改善・減量プログラムを行っています。あなたの膝と体が本来の力を取り戻すお手伝いを、私たちが全力でサポートします。
東京都江東区大島6ー9ー12 アプツ大島1階
パーソナルトレーニングサモーナ 大島駅店
整骨院・整体院に併設された数少ないパーソナルトレーニングジム
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