誰もが加齢とともに起きる健康問題やその予防方法などについて対策を考えたり、悩んだりしたことがあると思います。
未来の自分の健康のことについて考えることはとても大切なことです。
しかし、目の前の仕事や子育てのこと、友人との予定でいっぱいで、あまり考えたことがない方もいる方もいらっしゃるかもしれません。
もしくは時間がたくさんあっても、頭の中が現在の人間関係によるストレスや経済状況のことでいっぱいになり、自分の未来の健康のことなんて考えられない・・・という方も多いかもしれません。
しかしそんな状況の時でも、一度立ち止まって将来の健康について考える時間というのも悪くはありません。
私は健康的に過ごすためのことしかアドバイスをすることができませんが、現代社会に蔓延する健康問題を通して、過去から現在の自分を振り返り、将来の自分を見据えるきっかけになればと思い、今回はこのような記事を書かせていただきました。
加齢が人の身体に及ぼす影響
年齢を重ねるにつれ、誰の体にも『何かしらの変化』が訪れます。
皮膚や髪の毛、関節や筋肉、視力、聴力など、身体のあらゆる部分、あらゆる臓器が少しずつ歳をとります。
加齢にともない多くの場合、身体が変化に対して弱くなり、あらゆる機能に衰えが生じていきます。
味覚を例にすると、加齢と共に少しずつ味覚の感じ取り方が衰えていくことが知られています。
実際に人工甘味料を使用した研究では、甘さを感じるのに、若者と高齢者を比較した際に、高齢者では３０％より高い濃度の甘味料が必要とされたという研究報告もあります。
また、トマトスープの味を感じ取るのに、高齢者では平均で約２倍の塩が必要だったという研究報告もあります。
味覚を例にしましたが、もっとも日常生活において衰えを感じやすいのが『筋力や体力』ではないでしょうか？
特に、若い頃スポーツに打ち込み疲れ知らずだった人が、社会人になり運動の頻度やスポーツに打ち込む機会がなくなり活動量が減ってしまい、少し小走りしたり、階段で息が上がってしまうということも少なくありません。
また、加齢とともに訪れる免疫機能の衰えは、パンデミックの際によく知られるようになった事実かもしれません。
近年では、新型コロナウイルスが流行し、高齢者であるというだけでも重症化のリスクや死亡のリスクが増すということが広く知られるようになりました。
その事実を知っていれば、これ以上加齢とともに生じる免疫機能の低下について語る必要はないでしょう。
先述したように、身体の機能は衰えていく部分が多く、衰えを防ぐことができないこともたくさんあります。
しかし、その衰えを遅くしたり、若い頃の機能を維持できるものもあります。そこで次の章では、そのような部分にスポットを当てていくつかご紹介させていただきます。
加齢と心臓、血管の健康について
歳をとること自体が、血圧の上昇や心筋梗塞、狭心症のリスクになることは広く知られています。
これは、使っていると水道管が少しずつ錆びて通りが悪くなっていくのと同じような現象です。
しかし、それは変えられない事実ではなく、血管も水道管と同じようにメンテナンスが可能なものなのです。
塩分の多い食事、肥満、喫煙など、生活習慣に関わる多くの不摂生や行動が血管の『サビ』を促進します。
逆に、減塩しダイエット、禁煙など、健康的な生活習慣を送ることで血管を若々しい状態に維持することができます。
血管の『サビ』に関わる病気として、高血圧や脂質異常症などの病気がピックアップされます。
これらの病気は、実際のところ軽視されがちです。
その理由としては、先述したような病気が、症状を引き起こすことがほとんどないからです。
コレステロールが高いからといって体調を崩すということはありません。
しかし、10年、20年と経過していくうちに、心筋梗塞の原因となり症状を引き起こすことになります。
症状が出てからでは遅いのです。
苦しむ前にできることはたくさんあります。
つまり、高血圧や脂質異常症などの病気は健康に対する負債となり、将来の自分に降りかかってくる問題です。
借金やローンはお金ができた段階で返済することができますが、このような健康負債はお金ができても返済することが難しく、元に戻すことができません。
だからこそ、体調が悪い・・・症状が出ている・・・と自覚していなくても、毎年健康診断を受け、血圧やコレステロール値、血糖値などを確認することが大切なのです。
そして、治療の必要や生活習慣の改善すべき点などは素直に受け入れ行動していくことがとても重要です。
たかが1年に1回の血液検査と思うかもしれませんが、その『1年に1回』で自身の健康状態が把握でき、単なる健康診断で済んでいるうちにチェックをすることが、若い身体を維持する上で大切です。
加齢とがん
がんの発生も加齢と共に増加することはよく知られています。
がんは心臓・血管疾患と対をなす２大死因の一つです。
防ぐことができるのなら防ぎたい病気です。
例えば、ある研究報告によりますが世界のがんのうち、３５％は予防できるものであったことが報告されています。
また、その中の原因で以下の９つが起因していたことが報告されています。
喫煙、アルコール、野菜や果物の摂取不足、肥満、運動不足、コンドームを用いない性行為、大気汚染、固形燃料の使用、医療機関での汚染された注射器の使用。
これらの情報は、先進国における統計だけでなく、発展途上国も含めた統計なので、必ずしも私たちが住む日本において当てはまるものではありません。
しかし、運動習慣や喫煙、アルコール、野菜や果物の摂取などについては、生活習慣に関わるリスクがあることがわかります。
これらの報告から分かるように、がんには生活習慣病という側面もあります。
果物や野菜を意識的に摂取し、日常的に運動を行い、アルコールや喫煙を控え体重を管理することで、心臓や血管の病気だけでなく、がんの予防にもつながります。
加齢と骨の健康について
女性で特に気にされるのは、骨粗鬆症ではないでしょうか？
男女比では１：３で女性が男性の３倍です。
骨の健康の維持には女性ホルモンが大きな役割を果たすので、閉経後に女性ホルモンの分泌量が減少し、骨粗鬆症が起こりやすくなります。
このため、６５歳以上の女性は骨粗しょう症の検査を受けることが推奨されています。
骨の健康を維持するためには、カルシウムやビタミンDの摂取、そして運動や禁煙が重要です。
魚介類や乳製品、大豆製品など、カルシウムを多く含む食品をバランスよく摂取し、適度に運動を行うことが非常に大切です。
加齢に伴う認知機能
最後の章になりますが、こちらでは認知機能についてお話しさせていただきます。
そもそも、まず認知機能とは何かご存知でしょうか？
これは、人間が学習し、記憶する、言語を用いる、計画したことを遂行する、自分の置かれた状況を認識する機能のことを言います。
『認知症』という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
認知症というのは、先述した要素のうち一つ以上が、生まれつきではなく後天的に衰退し、独立した日常生活を送ることが困難になった状態のことを指します。
２０２５年になると６５歳以上の５人に１人が発症すると試算されています。
皆さんの身の回りにも認知症の方はいらっしゃるかもしれません。
それぐらいありふれた病気ですが、その原因は様々なのです。
代表的なものとしては、アルツハイマー病が挙げられますが、アルツハイマー病は残念なことに今の医学では確実に有効と言える予防方法が確立されていません。
確実性は低いが有効とされている方法はあるようですが・・・しかし、認知症の原因として２番目に多い脳梗塞は予防することができる病気として知られています。
脳梗塞の予防方法は、基本的には心筋梗塞の予防方法と同じです。
つまり、健康的な食生活、運動習慣、血圧やコレステロール、血糖値の管理などです。
また、認知症でなくても人間の記憶力や集中力は年齢と共に衰退していきます。
これまでの話だと年齢を重ねることが悪いことのように聞こえてしまいますが、悪いことばかりではありません。
年齢と共に知識や知恵、経験を獲得することができます。
低下した筋力や体力に関しても、若い頃と同じレベルまでとはいきませんが、高齢者でも計画的にトレーニングや運動を行いながら体力を維持、向上させることができます。
防ぐことができない老化や病気がある事実は認めなくてはいけませんが、防ぐことができる老化や病気があることは紛れもない事実です。
置かれた環境は様々かもしれませんが、防ぐことができないもので悩むのではなく、防ぐことができるものを確実に防ぎ、人生を全力で楽しむということが大切なことではないでしょうか。
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